イベントレポート:福岡から“変革”を仕掛ける3時間―FUKUOKA Re:Birth
2026年3月27日、九州大学病院キャンパス内「エフラボ九大病院」にて、ライフサイエンス領域の関係者が集うイベント「FUKUOKA Re:Birth」を開催しました。
◼️エフラボ九大病院という“場”の設計思想 〜知はどこで動き出すのか〜
イベントのスタートとして、福岡地所 シニアマネージャーの味岡倫弘氏より、会場であるエフラボ九大病院について説明が行われました。
実際に足を踏み入れると、「病院」という言葉から想像される空間とは大きく異なり、スタートアップオフィスと研究施設が融合したような開かれた空間が広がっています。ガラス張りの実験室や共有スペースの設計には、「研究を閉じない」「外とつなぐ」という明確な意図が感じられました。
開設から約2ヶ月という短期間にもかかわらず、すでに多くの来訪者が施設見学に訪れており、ライフサイエンス分野における新たな拠点として関心が高まっていることがうかがえます。
本施設は単なる場所ではなく、「人と知が交わることで価値が生まれる場」として設計されています。
そして実際にその場に身を置くと、“偶発的な出会いが設計されている空間”であることに気づかされます。研究・ビジネス・行政という本来交わりにくい領域が、同じ空間の中で自然に重なり合うことで、知は「動き出すもの」へと変化していく―そのような感覚を強く受ける場でした。
今回のイベントは、その設計思想と重なり合い、福岡におけるライフサイエンスの可能性を広げる“起点”としての意味を持っていたと感じています。

◼️Session 1
Disruptive innovation: 福岡で可能なのか?
〜東京でもシリコンバレーでもない戦い方〜
福岡にエフラボ九大病院が誕生したことで、ライフサイエンス領域におけるイノベーションの加速が期待され、実際に多様なプレイヤーが福岡に集まり始めています。
東京やシリコンバレーの模倣ではなく、福岡独自の形でイノベーションを生み出せるのか——その問いを軸に本セッションは展開されました。
モデレーターは瀬尾亨氏(Newsight Tech Angels)。
出倉絵里葉氏(田辺ファーマ)、吉田知弘氏(アステラス製薬)、高橋竜久氏(Plug and Play Japan)、則松聡氏(福岡市)といった多様な立場の登壇者を迎え、「今回も切り込んでいきます」という瀬尾氏の一言とともに、登壇者の苦笑いを誘いながらスタートしました。
セッションでは、それぞれの立場から率直な意見が交わされ、「立場の違いを理解しながら対話する場」として非常に質の高い議論が展開されました。
地理的にも特異性のある福岡において何が可能なのかという観点から、ライフサイエンスに限らず観光などの視点も交えた議論が行われ、エコシステムを創る上では業界を越えた多様なプレイヤーの視点が不可欠であることが、会場全体で共有される時間となりました。
特に印象的だったのは、行政に対する要望が多様な視点から出されていた点です。福岡市の則松氏が話しやすい空気をつくっていたこともあり、一方的な要求ではなく、行政の役割や制約を理解した上での建設的な対話が行われていました。
ここで見られたのは、「期待値のズレ」を前提とした対話ではなく、「どうすれば同じ方向を向けるか」という建設的な議論でした。これは、エコシステム形成において非常に重要な一歩であり、単なる意見交換を超えた価値のある時間だったと感じています。
また、瀬尾氏のファシリテーションも際立っており、一歩踏み込んだ問いを投げかけながら登壇者同士の議論を引き出し、さらに会場を巻き込むことで、参加者からも意見や要望が飛び出すなど、会場全体が一体となるセッションとなりました。



◼️Session 2
マインドマップからみるビジネス戦略思考 〜研究を事業構造に翻訳する〜
Session 1の熱量を引き継ぎながら、瀬尾氏および紫藤氏によるマインドマップセッションが行われました。
手を動かす時間はなかったものの、事業化に向けた思考整理のツールとしてマインドマップの有効性を感じるには十分な内容でした。
紫藤氏のマインドマップの実例が提示された瞬間、会場の思考が一斉に“構造化”へと向かったように感じられました。研究者が自身のアイデアマップをもとに「やりたいこと」や「実現したい未来」を語る場面もあり、会場は大きく盛り上がりました。
ここで印象的だったのは、「良い研究をどう事業にするか」という問いが、“個人の内側の言語”として語られ始めたことです。単なるフレームワークの共有ではなく、自身の言葉で構想を語ることが、事業化への第一歩であることが体感されていました。
また当日はポスター掲示も行われ、参加者それぞれが自身の研究や事業への想いを語る姿が見られました。本セッションは単なるワークショップにとどまらず、“意思の表明の場”として機能していたと感じています。


◼️Session 3
感性が光る!利酒とエレベータートーク
〜五感で磨く言語化力〜感性は経営資源になる
最後のセッションでは、M&Jオリジナル企画として継続して実施している「利酒×エレベータートーク」を行いました。
短時間で自分の価値を伝える力を磨くことを目的としたこのプログラムは、単なるトレーニングではなく、「言語化とは何か」を体感する場でもあります。
今回は九州の春限定酒や希少な日本酒4種類を用意し、参加者の期待感を高めながらスタートしました。
この時間になると会場の熱量は最高潮に達し、名刺交換や会話が活発に行われ、進行のアナウンスがかき消されるほどの盛り上がりとなりました。これは、それだけ自然な対話が生まれていた証でもあります。
印象的だったのは、日本酒という“共通の体験”を通じて、参加者が一度専門性や肩書きを手放し、純粋に「感じたこと」を言葉にしていた点です。その結果、普段とは異なる言語が引き出され、それがそのままエレベータートークへとつながっていく——極めて本質的な学びのプロセスが生まれていました。
笑いと拍手が繰り返される中で、会場全体が一体となる瞬間が何度も生まれ、参加者の積極性が自然と引き出されていったことが非常に印象的でした。


◼️まとめ
本イベントは、単なる講演や交流の場ではなく、参加者一人ひとりが主体的に関わり、対話し、考える「体験」として設計されています。
私たちが大切にしているのは、「楽しく学ぶこと」、そして一方通行ではない場づくりです。
今回もその意図が十分に反映され、参加者同士の自然な対話と笑顔があふれる時間となりました。その様子は、当日の写真にも表れている通りです。
また、エフラボという場そのものが、単なる“会場”ではなく、思考を促し、対話を生み出し、創造性を引き出す「装置」として機能していたことも強く印象に残りました。
「FUKUOKA Re:Birth」は単発のイベントではなく、ここから生まれる関係性や対話が、次の挑戦へとつながっていくことを期待しています。